現代に受け継がれる粋な色彩美。

江戸の庶民を虜にした「江戸紫」

古代より高貴な色として尊ばれ、その縁起の良さから古希や喜寿のお祝いに取り入れられてきた紫。江戸を代表する染め色「江戸紫」は、赤みが強い京紫に対して青みが濃いのが特徴で、粋な江戸っ子の美意識を象徴する色として知られています。

太武朗⼯房では江戸紫を落とし込んだ江戸切子を幅広くラインナップ。今回は、おめでたい紫色の一つ、江戸紫の歴史とよもやま話をご紹介します。

東京に深い由縁のある伝統色

江戸紫が誕生したのは江戸時代。武蔵野に広く自生していたムラサキ草の根を原料に、江戸の町で染めたことが色名の由来と伝えられます。江戸紫は庶民のあいだで大流行し、やがて江戸を代表する特産物として全国に名を馳せるようになりました。

当時、江戸の町では生活用水として神田川の水を利用しており、江戸紫を染め出す際にも同じ水を使用していました。神田川の水源は井の頭池であったことから、紫根問屋や紫染屋らが染め物産業の発展を感謝して、1865(慶応元)年、井の頭弁財天に紫燈籠を寄進しました。紫燈籠は今もなお境内に現存しており、刻まれた寄進者の名を確認することができます。

古くから伝わる江戸の伝統美を感じられる江戸切子は、長寿のお祝いはもちろんのこと、海外へのお⼟産としてもおすすめです。

歌舞伎の衣装から人気に火がついた江戸紫

江戸時代に江戸紫が流行した理由に、歌舞伎の演目である「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」で、主人公の助六が江戸紫の鉢巻きを締めていたことが挙げられます。

当時、江戸の庶民にとって歌舞伎は最大の娯楽。歌舞伎役者はファッションリーダー的な存在で、着物の柄や色、着こなしなどを自分たちの生活に取り入れていました。かくして江戸紫はトレンドカラーとして愛されるようになったのです。なお、江戸紫は着物全体に使うのではなく、差し色として使うのが主流だったのだとか。また往時の江戸は新興都市であったため、「粋」を表すものが好まれていたことも、江戸紫が爆発的な人気となった背景とも言われています。

江戸の人々が熱狂した江戸紫を令和のいま、太武朗工房の江戸切子を通じて体感するのも粋な楽しみ方と言えるでしょう。

今なお、暮らしの中に息づく粋な江戸の色

「粋」の象徴として江戸の庶民に広く親しまれてきた「江戸紫」。江戸時代にはじまった色彩は、現代でもさまざまな場面で受け継がれています。その代表格とも言えるのが東京スカイツリーの照明や2020年東京五輪・パラリンピックの招致エンブレム。さらに1964年に制定された東京都旗にも江戸紫が用いられています。

太武朗⼯房では江戸紫を取り入れた江戸切子シリーズを展開。江戸紫の色被(き)せガラスに一つひとつ職人の手仕事による切子細工を施し、江戸ならではの粋を美しく表現しました。一口ビールから懐石杯、タンブラー、フリーカップに至るまで、幅広い商品を用意。ビールや日本酒はもちろんのこと、ソフトドリンクや冷茶など日常の多彩なドリンクシーンにふさわしいアイテムを取り揃えております。

日々の食卓やくつろぎタイムで伝統的な色彩美を楽しみ、古の時代に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。